祇園祭でにぎわう、夏の京都。創業200年の歴史を持つ呉服店「おか善」さんを訪れました。9代目社長を務める岡本淳平さんとは歳も近く、以前から親しくさせていただいております。今回は特別に着物を制作する様子も見学させていただきながら、日本の伝統文化を守り次代に継承していく呉服店、日本料理店としての心構えについて語り合うことができました。

「おか善」さんとは、さまざまな節目でご一緒させていただいており、「おか善」200周年の記念行事や、岡本さんの9代目社長就任式の折に当店で展示会などを開催していただきました。長い歴史の中、大事な局面で選んでいただいていることを本当にありがたく感じています。

「おか善」さんと「福田家」のお付き合いの始まりは、50年ほど前になるでしょうか。私の祖母である2代目女将が、知人の紹介を受けて「おか善」さんの反物をどっさりと買い込んだと聞いております。祖母が着ていた着物は現在も、私の母親が大切に受け継いで着ております。

9代目の岡本淳平さんは私の１歳年上で、出会いはお互い20代の頃でした。当時、会社勤めだった私は大阪に配属され、関西に親しい友人が一人もいなかった私に、母親が「京都の『おか善』さんに、歳の近い御子息がいらっしゃるから、一度ご挨拶に行ってきなさい」と助言したことがきっかけでした。

言われるがまま、菓子折を持ってお店を訪れたところ、すぐに意気投合。以来、仕事の取引先としてではなく、飲み友達として仲良くさせていただいています。私自身も社長就任記念の展示会の際に「おか善」さんで着物を一式仕立てていただきましたが、こうして袖を通し、上質な生地を纏っておりますと、どこか背筋がピンと伸びる思いがあります。

日本料理の世界においても、着物は欠かすことのできない要素のひとつです。海外の方から見れば、日本らしさを感じるユニフォームとしての魅力があるでしょうし、我々日本人としても、お食事のときに靴を脱いで料亭の畳に上がるというのは、日常生活から切り離された特別感を感じられるのではないでしょうか。

今回は、祇園祭の開催で盛り上がる京都を訪れ、岡本さんが祇園祭の中心的役割を担うお一人として活躍する様子も、大変誇らしい気持ちで拝見しました。実は、プロのラグビー選手だった岡本さん。学生時代は天理高校、明治大学ラグビー部で活躍し、私と出会った頃は花園近鉄ライナーズに所属していました。岡本さんの引き締まった身体と、ラグビーで培った強靭な精神力、しなかやかで柔軟な物事の考え方は、京都の老舗呉服店社長として活躍する今も、大きな財産になっているのではないかと思います。

初めてじっくりと見せていただいた着物の制作現場は、驚きと感心の連続でした。デザインの下絵を描く人、染める人、織る人、縫う人……。作業工程にごとに担当する職人さんが変わり、それぞれのお仕事を信頼しながら、リレーのように繋いでいくのです。これだけたくさんの人の手が関わって、いろんな人の思いがつまって完成していることを知り、改めて感動を覚えました。

近年、着物づくりにおいても職人仕事の担い手が減っていると聞きますが、古くからの文化を継承し、発展させていくお仕事として、もっともっと着物文化にスポットライトが当たってほしいなと感じました。私自身も、着物を着る機会を増やせるようにしていきたいと思います。

創業から200年という歴史をもつ「おか善」さん。老舗の多い京都においては、まだ若いお店といわれるそうですが、いまの世の中でひとつの企業が100年も続くということは大変なことだと思っています。「福田家」もそれに比べてまだまだではありますが、これからもいいお付き合いを続け、お互いに切磋琢磨しながら長く愛されるお店であり続けたいと考えています。

「おか善」岡本淳平さんよりひと言

福田さんとは、初めから仕事相手ではなく友人として出会い、いい関係を続けてこられたことをとても嬉しく感じています。福田家オリジナルのハヤシライスや季節のお取り寄せ鍋などの新商品を開発・発売するなど、さまざまなことに挑戦したり、発信されている姿勢も素晴らしいと思います。これまでの福田家さんにはなかったことですし、いろんな所へ行かれて勉強されている姿を見て、同年代でともに社長をしている私としても、いい刺激をいただいています。今後お互いの子どもたちの代でも、同じように縁を繋いでいってもらえたらさらに嬉しいですね。いい刺激をしあえるような環境がずっと繋がっていくことを願っています。

写真左：おか善 9代目社長 岡本淳平さん
写真右：紀尾井町 福田家 福田貴之