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福田家の調理場から #12 旬の味を届ける、青果のプロフェッショナル

「納め屋」について触れた前回に続き、今回は同じく豊洲市場で活躍する青果のプロフェッショナル「定松」さんついてお話しいたします。

私たち料理店にとって、コースメニューに組み込んでいる素材の果物が急に届かなくなってしまっては困ります。しかし、近年はとくに異常気象などもあり、天候などによっては「先週までふんだんにあった果物が、今週はひとつもない」というようなケースも十分にありうるのです。

そんなとき、「『ない』では終わらせない」と言ってくださるのが定松さんです。全国の産地とつながる独自のネットワークを駆使して、希望に見合う品質や数を揃えてくださいます。それがどうしても難しい場合は、早くから情報をキャッチし「今シーズン、この果物はいい状態で収穫ができないかもしれない」「代わりに、この果物はどうですか」と事前連絡や別の提案をいただけるので大変心強いのです。

明治43年に神田多町で青果問屋として創業した、100年以上の歴史を誇る定松さん。昭和10年には日本初の中央卸売市場開設にともない築地で青果仲卸を開業、その後も徐々に事業を拡大しながら、現在は料理店やレストラン、ホテルなどと取引をおこなう青果業務用卸の会社として各所へ青果を流通させています。

今回豊洲市場でお会いしたのは、仲卸部門営業課長の日高真一さんです。市場のリアルな様子を伝えるため、毎朝売り場に並んだ果物の写真を撮ってお客さんに送り、コミュニケーションを取りながら仕入れや販売をされているそうです。また出張で全国を飛び回り、産地や生産者、市場や農協からの情報を得ることや、産地開発や食材提案などにも力を入れていらっしゃいました。

一人ひとりの生産者さんとしっかり話をし、果物の味もきちんと判断し、品質がいいものはその価値が最大限に伝わるように、包装箱ひとつにしてもアドバイスや提案をすることもあるのだと聞きました。私たちのような料理店や料理人側はもちろんですが、生産者さん側から見ても定松さんはきっと心強い存在になっていることでしょう。

さまざまなお話を聞かせていただき、果物と真摯に向き合う姿勢とプロフェッショナルな視点に深く感銘を受けました。100年の歴史の中で着実に信頼を積み重ねてきた定松さんだからこそ、多くの料理人や料理店が信頼を置いているのだと改めて感じました。これからも末永くお付き合いを続けていけましたら幸いです。

料理長・松下俊一よりひとこと

定松さんとの出会いは4年ほど前、私が豊洲市場を訪れたときにたまたま目に入ったイチゴの箱がきっかけでした。それは福田家でも取り扱っていた、茨城県鉾田市の「村田農園」さんのイチゴでした。それまで私は村田農園さんから直接仕入れをしていたのですが、鮮度を保つためにはまとめ買いができず、1〜2パックという少量を毎日のように宅急便で注文するにはコストがかかるという悩みがありました。これを豊洲市場で買うことができるのならば理想的じゃないか! と、さっそく日高さんに話しかけたことを覚えています。

話をしながらすぐに「この人はフルーツのことをすごく勉強しているな。この人から買ったら間違いはないな」ということがわかりました。以来、イチゴ以外にも東京レモン、紅マドンナ、イチジクなどさまざまなフルーツの情報をいただき、仕入れさせていただいています。

フルーツは天気に左右されやすいので、早めに情報をいただけるのが何より助かっています。昨年も、紅マドンナの収穫量が減り高騰しているという情報を事前に教えていただけたおかげで、コースメニューでは別のものを使うなどの対応ができました。果物のことでなにかあればいつでも相談ができるので、私にとって定松さんは非常に心強く頼もしい存在です。

「定松」日高様よりひとこと

私たちの主な仕事は日本各地の生産者さんから果物を集め、販売することです。販売先は百貨店、小売店、料理店やレストラン、ホテルなどと幅広く、他店と比べてかなり多くの品数・種類の果物を揃えていることも当店の特徴です。

お取引先からは「このフルーツの、このサイズだけがほしい」「この時期にたくさんの数をそろえてほしい」など、さまざまなご要望をいただきます。また、生産者さん側からは「これをもっと売りたい」とか、「こういう珍しい果物があるけど、売れそうですか?」などと相談をいただくことも多々あります。

しかし、果物は工業製品ではないので、すべてが予定通りにはいきません。そこで買い手側と生産者側、両者の事情を汲んで意見をすり合わせていくのが、私たちの役割です。そのためにも毎週のように出張に行き、各地の競り人からの情報や産地からの情報を仕入れ、他の市場や農協とのお付き合いもしながら、その年やシーズンごとの状況を把握するようにしています。

福田家さんとは直接電話をしながら仕入れについての相談ができますし、「とにかく何でもいいからそろえてほしい」というようなことは決して言わず、きちんと素材の価値をわかってご注文をくださるので、とてもありがたく思っております。

愛情とこだわりを持って育てている全国の生産者さんがたくさんいるので、そうした方々ともっとつながり、おいしい果物をより良いかたちでお客様にお届けできるよう、これからも尽力していきたいです。

紀尾井町 福田家

〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1番13号

[ TEL ]
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昼 11:30~14:30 ※昼の予約は火曜日から土曜日まで承ります。また、仕入の都合にて、祝日後の火曜日等もお休みさせていただきます。
夜 ご入店時間 17:00~19:30 ※土曜日夜席につきましては、10名様より承ります。
[ 定休日 ]
日曜日、祝日、土曜日(月2回) ※夏季・年末年始休業あり