福田家四代目・福田貴之
第1回の食材は、長野県飯田市の鮎養殖場「匠天龍鮎」の棚田健治さんが育てている「天龍鮎」をご紹介します。南アルプスの伏流水を使用し、低水温管理でじっくりと育てられた元気な鮎たちです。とりわけ素晴らしいと感じるのは、店に届いた活魚が本当に生き生きとした姿を見せてくれること、そしてこちらの希望通りのサイズにきちんと揃えて送っていただけることです。
私も「匠天龍鮎」を訪れて出荷の様子を見学させていただきましたが、棚田さんの確かな目と経験による選別と、おいしい鮎を新鮮なうちに全国へ届けたいという熱い思いが、その背中からひしひしと伝わってきました。きれいな水と多量の酸素とともに運ばれてくるため、当店に到着したらすぐに大きな水槽に移して泳がせ、毎日新鮮な状態でお客様にご提供しています。
天龍鮎との出会いは、運命といってもいいでしょう。2017年より当店の料理長を務める松下俊一の出身地が飯田と近く、棚田さんとは高校時代からの知り合いだったのです。高校卒業後は離れていたそうですが、共通の友人を介して棚田さんの鮎のことを知り、その質の高さに驚いたそうです。松下が料理長に就任した2017年5月から仕入れさせていただいています。棚田さんのもとで育った新鮮な鮎を使い、松下が腕によりをかけて仕上げた鮎料理を、どうぞお楽しみください。
料理長・松下俊一よりひとこと
匠天龍鮎の魅力は、いつも同じ味で料理を仕上げることができる点です。自然の状況に左右され病気などの可能性も高い川釣りの鮎に対し、きれいな地下水で養殖をしている天龍鮎は状態が安定しており、当店の料理においても大きな魅力となっています。また、生きたまま届くこと、こちらの注文に合わせてちょうどいいサイズのものを送っていただけることもありがたく感じています。
食材の仕入れという面でも、昔から互いに顔を知っている田舎の友人にお願いできる安心感がありますね。全国の錚々たる料理長やシェフの方々から支持され、その期待通りの鮎を仕上げてくる棚田さんは、地元の同級生として、食に関わる仕事人として、とても誇りに思います。生き物ですので、1月下旬から10月下旬のシーズン中は休みなしで働いていると聞きます。「いつも同じ味の鮎を届けなければ」という強い責任感には本当に頭が下がります。
匠天龍鮎 棚田健治さんより
松下料理長とは高校時代からの知り合いで、東京に行って料理人になったことは知っていましたが、まさか福田家さんの料理長になって、うちの鮎を仕入れてくれるとは……。とても嬉しいことだと思いますね。運命だなと感じています。