秋をいただく、紀尾井町 福田家の鹿鍋。料理長・松下俊一

冬のふぐ鍋、春の花山椒鍋、夏の鱧蓴菜鍋…と、福田家よりお客様の食卓へお届けしている季節の鍋セット。この秋は広島県安芸高田市の良質な鹿肉と長野県産の松茸を味わっていただく「鹿鍋」をご用意いたしました。料理長の松下俊一よりご紹介申し上げます。

臭みのない、新鮮で良質な鹿肉

まず、主役は安芸高田市の猟師・古門さんが仕留める鹿肉です。撃ち取ってからの処理が適確かつ早いので、よけいな血が出ることもなく新鮮で良い状態のまま届きます。本来、鹿肉というものはクセがある肉なのですが、この鹿肉に関しては臭みもなく、いわば「おいしいクセ」しか残っていません。私自身も長野の田舎育ちで子どものころから鹿肉を食べてきたのですが、やはり臭いイメージが強く、これほどまでにすっきりとした鹿肉は食べたことがありませんでした。鹿肉が臭くて苦手だと思われている方にこそ、一度このおいしさを知っていただきたいですね。

部位は主にすね肉を使用しています。鹿肉自体、脂が少ない肉ではあるのですが、すね肉はさらにゼラチン質が豊富でしっとりしていますので、やわらかく、おいしく召し上がっていただけると思います。スープは大量の鹿の骨(ガラ)をオーブンで焼き、セロリ、ニンジン、ダイコン、タマネギとともにじっくりと煮込んで出汁をとりました。野菜の甘みもたっぷりと感じられますし、肉自体の素材がいいので、濁りのないすっきりとしたスープとなっております。

秋の味覚を詰め合わせ

鹿肉のおいしさを引き立てる具材として、長野県産の松茸、シャキシャキとした歯応えの京都の壬生菜、やわらかく焼いた蕪、もちもちとした食感の揚げポテト麩、そして大豆をふんだんに使った濃い豆乳から作った平湯葉を合わせました。食材はすべて仕込みをし、切り分けてありますのでそのままご自宅のお鍋に入れてお楽しみいただけます。鹿肉と野菜の出汁のほか、昆布出汁は味が濃くなったときに加えるなどして、お好みの味でどうぞ。

締めは奈良県・三輪にある山勝製麺の吉野葛入り細うどん「一筋縄」。細めのうどんに出汁の旨味が染み込み、最後まで出汁のおいしさを味わっていただけます。瓶に詰めた鹿のレバーペーストは、お鍋には入れず野菜スティックやガーリックトーストにつけてお召し上がりいただくのがおすすめです。臭みがまったくなく、すっきりとした味わいです。

子持ち鮎の昆布巻き

この秋にもうひとつ、お取り寄せで楽しんでいただける自信作が完成しました。題して「ぎっしりつまった子持ち鮎の昆布巻き」です。長野県飯田市にある鮎養殖場「匠天竜鮎」の棚田健治さんが育てた子持ち鮎は、尻尾の先まで卵がギューッと詰まっていて身がしっかりとしています。このぎっしり感は、なかなか他では味わえないかと思います。

鮎の骨や頭なども気にせず食べられるように、落し蓋をして圧力をかけながらゆっくりと炊いて調理しております。ポイントは番茶で炊く点で、水と比べて格段にやわらかくおいしく仕上がるのです。炊いたときの汁を煮詰めて濃くしたタレもお付けしていますので、上からかけてお召し上がりください。

頭から尻尾までを6切れに切ったもの2匹分を、福田家の焼印を押した木箱に入れてお届けします。日持ちは冷蔵庫で1週間ほど。贈り物やお正月の食卓などにもおすすめです。

創業82年を迎えてなお、新しいチャレンジを

創業82年を老舗料亭ではありますが、だからこそ昔から受け継いできたものを残すとともに、常に新しい試みは続けていきたいと考えています。2020年にはお弁当や仕出し以外で初めて、お客様のご自宅へ福田家の鍋セットをお届けいたしました。また、安芸高田市の鹿肉と出会い、これまで使用することのなかった鹿肉をコース料理の食材として取り入れたのも3年ほど前でした。これから挑戦したいもののひとつが、鹿肉を使ったローストビーフ。いい鹿肉なのでさっと火入れをしただけでもレアで食べることができて、なかなか面白く仕上がるのではと考えています。お店にお越しいただいたお客様にも、ぜひ味わっていただきたいですね。

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紀尾井町 福田家

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